Kirchhoff-EQ - Three-Body Technologyをレビュー
Kirchhoff-EQは、Three-Body Technologyがリリースするパラメトリックイコライザープラグイン。
最大32バンド、ダイナミックEQ機能などを備えた柔軟性、そしてビンテージアナログモデルも搭載されているのが大きな特徴です。
オールマイティーになんでもこなせる、高機能EQがほしい!
というDTMerは、ぜひチェックを。
記事下の方では、人気の超定番EQプラグイン、FabFilter Pro-Q3との比較もまとめています。
Kirchhoff-EQ - Three-Body Technologyの使い方
さて、ここからはKirchhoff-EQのおもな特徴や使い方について説明していきます。
上記の動画もあわせてチェックしてみてください。
15の柔軟なフィルタータイプ【最大32バンド】
Kirchhoff-EQは最大32バンドでサウンドをコントロール可能です。
まず、フレキシブルに使えるベーシックなフィルタータイプが、Bell・Low / High Shelf・Low / Band / High Pass・Notch・Tiltなど11種類。
それぞれ、Slopeコントロールはノブを使って無段階調整できるのがとても便利。こまかいところまで思う存分作り込んでいくことができます。
Miscフォルダにある4タイプも強力。
MiscフォルダにあるWall HP / LPフィルターを使えば、高域や低域をバッサリとカットしてくれます。サンプリング素材に使ったり、リミックスに使ったり、クリエイティビティの可能性もひろがります。
さらに、Allpassフィルターを搭載しているのも特徴的。位相をコントロールできるので、複数マイクのミックスなどに役立ちます。
Left / Right・Mid / Side・ソロモード
L/R・M/S処理は、それぞれのバンドで使い分けられるようになっています。
また、パンスライダーを使って、こまかくL/RやM/Sのバランスをコントロールすることも可能。
こちらの機能は、下で紹介するビンテージモデルのフィルタータイプも共通です。
32のビンテージモデルフィルタータイプも
くわえて、Kirchhoff-EQにはビンテージハードウェアをモデルとしたフィルタータイプも32種類搭載。
モデルは9種類。下記の表記となっています。
ビンテージモデル
- Type E
- Type G
- British N
- EQ250
- Vintage Tube
- Tone Stack
- Blue
明記はされていませんが、表記やGUIからみるに、SSL・Neve・Pultec・maagなど鉄板モデルがラインナップされています。
これらを1つのプラグインで、バンドごとに使い分けることができ、周波数帯設定も柔軟なのはKirchhoff-EQの大きな特徴です。
Dynamic EQ
Kirchhoff-EQはダイナミックEQも高機能。各バンドで[D]ボタンを押すと、ダイナミックEQコントロールが表示されます。
設定したThresholdに対して、Below・Aboveのどちらもゲインを増減させることが可能。コンプレッサーやエキスパンダーで言う、ダウンワードコンプレッション/ アップワードコンプレッションおよび、ダウンワードエキスパンション / アップワードエキスパンションをそれぞれ設定することができます。
Attack・Releaseタイムもコントロールできるようになっており、ほとんどマルチバンドコンプレッサーのようなイメージで使えます。
Detect・Relative
Dynamic EQ機能の中でもとくに特徴的なのが、[Free] Detect・Relative設定です。
ダイナミックEQが検出する範囲をピンクのDetectで設定。そして、Detectで設定した範囲のボリュームが、どの部分に対して大きいのか小さいのかという範囲を、Relativeで設定することが可能。
ディエッサーとして使いたい場合など、よりていねいな処理をすることができます。
Spectrum Grab・キーボード表示
Spectrum Grabモードにすれば、アナライザー上で処理したい帯域にピンポイントでバンドを作成することができます。
また、GUI下にはキーボード表示もあり。音階にフォーカスしてイコライジングしたいときに便利です。
Band List
作成したEQバンドは、GUI下で一覧表示することが可能。v1.4アップデートの新機能です。
こちらからオン/オフしたり、基本的なパラメーターのコントロールも可能。トータルでチェックしながら調整していきたいときにとても役立ちます。
Lookahead・Side・Width
こちらはGUI右下部分。
Kirchhoff-EQには、コンプレッサーにあるような、先読み処理をするLookahead機能が搭載されています。ダイナミックEQをこまかくコントロールしたいときに有効です。
また、v1.4アップデートからは、Side・Widthのコントロールで、ステレオ感のバランスを調整できるようになっています。
Minimum・Analog・Mix・Linear・Phase Mode
GUI上部からはPhase Modeが変更可能。リニアフェイズEQに対応しています。
そして、特徴的なのはMixed Phaseモードです。低域ではMinimum Phase、高域になるにつれてLinear Phaseに変化。それぞれの長所と短所を、シームレスに使い分けることができます。
Left / Right / Mid / Side モニター
こちらはGUI左下。
モニターするサウンドを、Left / Right / Mid / Side成分でサクサクと切り替えてチェックすることができます。
Kirchhoff-EQとFabFilter Pro-Q3を比較
ここで、人気の超定番EQプラグイン、FabFilter Pro-Q3とKirchhoff-EQを比較してポイントをまとめてみます。
Kirchhoff-EQはビンテージモデル搭載がアツい。
ビンテージモデリングのEQもまるっと使えるのは、Kirchhoff-EQの強力な特徴です。
ただ、一般的なビンテージアナログ系EQプラグインを考えると、そのUIや自由すぎない定番フォーマットが決まっているからこそ良さがあるとも言えます。
Kirchhoff-EQは最大32バンド。スロープ設定が柔軟。
ダイナミックEQも高機能。
このあたりの自在性も素晴らしいです。1つのEQでガンガン作り込んでいくことが可能。
なので、バンドリストで見やすく表示してくれるのはちゃんと考えられているなと思います。
Pro-Q3のあつかいやすさはやっぱり最高。
Kirchhoff-EQの機能性もすごいですが、Pro-Q3の使いやすさ・ていねいな処理のしやすさはやっぱりさすがです。
スペアナのグラフィックだったり、ノブのコントロールだったり、EQプラグインの決定版として長く使われているだけあります。
Pro-Q3のマスキングチェックやEQ Match機能は要チェック。
Kirchhoff-EQにない機能もPro-Q3には搭載されています。
複数トラックにまたがって帯域のマスキングをチェックできる機能や、EQ Match機能は、ワークフローをぐっとスピーディーにしてくれます。
こういったところも、多くのDTMerやプロにとって、欠かすことのできないプラグインとして使われている理由でしょう。
まずはPro-Q3がおすすめ。
Kirchhoff-EQとPro-Q3、両方を持っているのに越したことはありませんが、とりあえずどちらかと言われたらPro-Q3がおすすめです。
特に初心者DTMerにとっては、Pro-Q3のようなド定番プラグインをしっかりあつかえるようになった方が上達の近道になりますし、チュートリアルが豊富にアップされているのも助けになります。